探偵になるのに資格は要らない
探偵に調査を頼もうとして事務所を並べると、「有資格者が対応します」といった書き方に出会うことがあります。ここで最初に押さえておきたいのは、探偵業に資格という制度が無いことです。
このページは、探偵業を営むのに何が必要なのかを、探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)の条文から確認します。
必要なのは届出
条文はこう定めています。
探偵業を営もうとする者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。
「届出書を提出しなければならない」です。許可でも免許でもありません。届け出る先は都道府県公安委員会で、営業所ごとに出します。支店が3つあれば3回です。
警視庁も、この点をはっきり書いています。
探偵業を営むために、特別な資格等は必要なく、欠格事由に該当しなければ誰でも探偵業を営むことができます。
つまり試験もなければ、実務経験の要件もありません。「探偵の資格を持っている」という説明を見かけたら、それは法律上の資格ではなく、民間の団体が出している何かのことです。
誰でもと言っても、除かれる人はいる
「誰でも」の手前に条件があります。欠格事由です。
次の各号のいずれかに該当する者は、探偵業を営んではならない。
条文が並べているのは7つで、内容はこうまとめられます。
| 誰が営めないか | 期間 |
|---|---|
| 破産して復権していない人 | 復権するまで |
| 拘禁刑以上の刑を受けた人 | 執行が終わって5年 |
| 探偵業法違反で罰金を受けた人 | 執行が終わって5年 |
| 営業停止などの処分に違反した人 | 最近5年間が対象 |
| 暴力団員だった人 | やめてから5年 |
このほかに、心身の故障で業務を適正に行えない人、未成年者のうち法定代理人が上に当たる場合、法人でその役員が上に当たる場合が入ります。
ここから分かるのは、届出が確かめているのは「前歴が無いこと」だけだということです。調査の腕前や、報告書の質は見ていません。
届出をしないで営むと罰則がある
届出を出さずに営業した場合の定めもあります。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
この各号の1番目が、届出をしないで探偵業を営んだ場合です。自分の名義を他人に貸して営ませた場合も同じ号に並んでいます。
罰則があるということは、届出が任意ではないという意味です。だから「届出をしているかどうか」は、事務所を選ぶときの最初の関門になります。確かめ方は届出の標識はウェブサイトに出ているにまとめました。
名義を貸すことは禁じられている
届出をした事業者が、その名前を別の人に使わせることも禁止されています。
前条第一項の規定による探偵業の届出をした者は、自己の名義をもって、他人に探偵業を営ませてはならない。
これがあるのは、届出の意味が名義の共有で薄まらないようにするためです。名義を貸した側も、前に見た六月以下の拘禁刑または三十万円以下の罰金の対象に入ります。
読者の側から見ると、確かめるのは「届出があるか」だけでなく「その届出が、いま話している相手のものか」になります。届出の番号と一緒に載っている名称や所在地が、契約書に書かれている相手と同じかどうかを見ることになります。
届出があっても処分を受けることがある
届出は前歴が無いことしか見ていない、と書きました。これは言葉のうえの話ではありません。
警視庁は、処分を受けた探偵業者を公表しています。
探偵業法違反等により、公安委員会が営業停止命令・廃止命令等を行った探偵業者を公表しています。公表の期間は、当該処分が行われた日から3年間です。
2026年8月20日に見たとき、この一覧には1件が載っていました。公表されている内容を読むと、届出証明書番号を持っている事業者が、調査の相手方の家に宅配業者を装って入るなどしたとして、67日間の営業停止命令を受けています。
届出をしている事業者でも、こうなることがあります。だから届出は入口の確認であって、そこで終わりにはできません。
公表は処分の日から3年で消えます。裏を返すと、この一覧に載っていないことは「過去に何も無かった」という意味にはなりません。現在の中身は警視庁の探偵業法に基づく行政処分で確認できます。
届出があっても、できることは増えない
もうひとつ、届出について誤解されやすいところがあります。警視庁の説明を続けて読むと、こう書かれています。
届出をしたからといって、他の法令で禁止されている行為ができるようになるわけではありません。探偵業だからという理由で特別な権限が与えられることもありません。たとえば張り込みのために他人の家の敷地へ勝手に入れば、探偵であっても住居侵入にあたります。
この線引きは探偵にもできないことがあるで条文から整理しました。依頼する前に読んでおくと、「そこまでやってくれる」と期待して頼んで食い違う、という事態を避けられます。
選ぶときにどう使うか
ここまでを踏まえると、届出の扱い方は次のようになります。
- 届出があること自体は、選ぶ理由にはならない。前歴が無いというだけ
- ただし届出が確認できないことは、判断を保留する理由になる
- 腕前や報告書の質は、届出とは別のところで確かめる
料金の出し方や、契約前に説明される項目のほうが、事務所ごとの違いが出ます。料金の形は探偵の料金は内訳で比べるに、契約前に説明される項目は契約前に説明される9つの項目に分けて書きました。
まとめ
- 探偵業に資格制度は無い。必要なのは都道府県公安委員会への届出
- 届出は営業所ごとに出す
- 欠格事由に当たらなければ誰でも営める。見られているのは前歴だけ
- 届出をしないで営むと、六月以下の拘禁刑または三十万円以下の罰金
- 名義を他人に貸すことも禁じられている
- 届出をしていても処分を受けることはある。警視庁が3年間公表している
- 届出があっても、他の法令で禁止されていることができるようにはならない
「資格を持っている」ではなく「届出をしている」で確かめてください。