契約前に説明される9つの項目
探偵に依頼するとき、契約の前に書面を渡されて説明を受けます。これは事務所の親切ではなく、条文で決まっている手続きです。何が説明されるはずかを知っておくと、足りないものに気づけます。
条文の書き出し
探偵業法8条1項です。
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該依頼者に対し、次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。
「あらかじめ」「書面を交付して説明しなければならない」の2つが要点です。契約したあとではなく前、口頭ではなく書面です。聞かれたら答える、という形でも足りません。
9つの項目
条文が並べている項目を、順に書き出すとこうなります。
- 探偵業者の商号・名称・氏名と住所(法人ならその代表者の氏名)
- 届出をした公安委員会の名称
- 個人情報の保護に関する法律その他の法令を遵守すること
- 秘密の保持と資料の管理について定めた10条の事項
- 提供することができる探偵業務の内容
- 探偵業務の委託に関する事項
- 探偵業務の対価その他、依頼者が支払わなければならない金銭の概算額と支払時期
- 契約の解除に関する事項
- 探偵業務に関して作成し、または取得した資料の処分に関する事項
読者にとって重い項目
9つのうち、依頼の判断に直結するのは次の3つです。
2番目は届出をした公安委員会の名称です。サイトで標識が見つからなかった事務所でも、ここで確かめられます。探し方は届出をサイトで確かめる手順にまとめました。
7番目は金銭の概算額と支払時期です。「概算額」と書かれているところが実際的で、調査は状況で伸び縮みするので確定額を先に出せないことがあります。それでも概算は出す義務があります。料金の組み立て方は探偵の料金は内訳で比べるにあります。
8番目は契約の解除に関する事項です。途中でやめるときにどうなるかを、契約する前に示すことになっています。中身は解約と料金でもめたときの窓口に分けて書きました。
委託の項目がある理由
6番目の委託は、見落とされやすい項目です。探偵業法9条2項は、探偵業務を探偵業者以外の者に委託することを禁じています。禁じられているのは探偵業者以外への委託なので、別の探偵業者に回すことはありえます。
つまり、依頼した相手と実際に動く相手が違う場合があります。そこを契約前に示すのがこの項目です。線引きは探偵にもできないことがあるに整理しました。
資料の処分が最後に来る
9番目は、調査で作った写真や報告書を最後にどうするかです。返してもらうのか、破棄してもらうのか、いつまでに行うのかを決めます。
調査の記録は、依頼した側にとっても、調べられた側にとっても重い情報です。秘密の保持は業務に従事しなくなった後も続きますが、資料そのものをどうするかは別に決めることになっています。関連する義務は依頼する側にも書面の義務があるにまとめました。
契約後の書面には無い項目がある
契約したあとにも書面が渡されます(8条2項)。両方の項目を並べると、重なっていないところが見えてきます。
| 項目 | どちらに入っているか |
|---|---|
| 届出をした公安委員会の名称 | 契約前だけ |
| 提供することができる探偵業務の内容 | 契約前だけ |
| 調査の内容・期間・方法 | 契約後だけ |
| 調査結果の報告の方法と期限 | 契約後だけ |
届出をした公安委員会の名称は、契約前の書面にしか出てきません。契約書を後から見返しても、そこには書かれていない可能性があります。
だから届出を書面で確かめるつもりなら、契約前に渡されるほうを手元に残しておくことになります。写真を撮っておくだけでも違います。契約後の書面の項目は契約後に受け取る書面の8項目にまとめました。
説明が無かった場合
8条1項に違反して書面を交付しなかった場合、記載すべき事項を書かなかった場合、嘘を書いた場合は、いずれも三十万円以下の罰金の対象になっています。
依頼する側から見ると、書面が出てこないまま契約に進む流れになったら、そこで止まる理由があるということです。急かされている場合はなおさらで、条文の側では急ぐ理由がありません。
罰則は会社にもかかる
8条1項に違反した場合の罰則は、違反した人だけの話ではありません。探偵業法には両罰規定が置かれていて、法人の代表者や従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほかに、その法人にも同じ罰金刑が科されることになっています。
つまり「担当者が書面を渡し忘れただけ」という整理にはなりません。書面を交付する体制そのものが、事務所の側の責任として求められています。
依頼する側から見ると、書面が出てこない事務所は、一人の担当者の問題ではなく運営の問題として見てよい、ということです。
受け取ったら確かめること
渡された書面を前にして見るのは、次の点です。
- 9つの項目が全部あるか。特に7番目と8番目
- 書面に書かれた名称や住所が、話している相手と同じか
- 概算額に、交通費などの実費が含まれているかどうか
3つ目は書き方によって読み方が変わるところです。「調査料金」とだけ書かれている場合、実費が別に乗るのかどうかを聞きます。
まとめ
- 契約前に、9つの項目を書面で交付して説明する義務がある(8条1項)
- 「あらかじめ」なので、契約後ではない
- 届出をした公安委員会の名称が項目に入っている
- 金銭の概算額と支払時期、契約の解除に関する事項も入っている
- 公安委員会の名称は、契約後の書面には入っていない
- 交付しなかった場合は三十万円以下の罰金。両罰規定で法人にもかかる
書面が出てこないまま契約に進まないでください。