探偵の依頼ノート

探偵の張り込みと道具にも線引きがある

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2026/9/21公開

張り込みを提案されたら、待つ場所と持ち込む道具を分けて確認します。 空き家や公道という名前だけで、自由に調べてよいとは判断できません。探偵業の届出があっても、他の法律の制限は外れません。

この記事は張り込みの実行方法ではなく、依頼前に調査方法を質問するための確認メモです。説明に不安が残るなら依頼を保留し、手元の資料で法律相談する方法もあります。

人が住んでいる、または看守されている建物

  • 刑法130条の対象
  • 正当な理由なく侵入、または退去要求に応じないと成立
  • 拘禁刑3年以下または罰金10万円以下

人が住んでおらず、看守もされていない建物

  • 軽犯罪法1条1号の対象
  • 正当な理由なくひそんでいると成立
  • 拘留または科料

住んでいる・看守されているかどうかで、当たる条文が入れ替わる

建物の状態によって当たる条文が違う(刑法130条・軽犯罪法1条1号)

無人の建物に潜むこと自体が対象になる(1条1号)

人が住んでいる家に無断で入れば刑法130条の住居侵入です。探偵にはできないことについては探偵業法でもできないことがあるで整理しました。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。

この条文が対象にしているのは、誰かが住んでいるか、誰かが見張っている建物です。では、空き家や取り壊し前の建物のように、住んでいる人がおらず見張ってもいない場所は自由に使ってよいのでしょうか。そこに軽犯罪法1条1号が働きます。

人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者

刑法130条が「人の住居」「人の看守する」建物を対象にしているのに対して、軽犯罪法1条1号は逆に、住んでおらず・看守もしていない建物を対象にしています。2つの条文を並べると、住んでいるかどうか・見張っているかどうかに関わらず、無断で他人の建物の内部に身を置くこと自体が、どちらかの条文に当たりうる形です。

道具の携帯は、場所への立入りと別に確認(1条2号)

張り込みが長時間になるほど、護身のために何かを持っておきたいと考えることがあります。そこにも条文があります。

正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

「隠して携帯」が要件です。護身を理由にしても、正当な理由と認められるかは状況によります。調査の道具として刃物や鉄棒の類を用意する理由は本来無く、持っていること自体が疑いを招きます。

合かぎ・のみ・ガラス切りの隠し携帯(1条3号)

住居に入らない調査でも、道具の携帯だけで別の条文に当たることがあります。

正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

合かぎ、のみ、ガラス切りは、いずれも建物に侵入するのに使う道具の例です。探偵の調査は対象を見る・写す・尾行する行為が中心で、施錠された場所を開ける道具を必要としません。「壁を越えて調べる」「鍵のかかった場所も調査できる」とうたう事務所は、このあたりの条文に触れる方法を前提にしている疑いがあります。届出の確認方法は探偵業届出番号と標識を確かめる手順にまとめました。

建物の外でも、立入禁止の場所と田畑は別扱い(1条32号)

1号が対象にしているのは「邸宅、建物又は船舶の内」、つまり建物などの内部です。建物に入らず、屋外で見張る場合はどうでしょうか。そこには別の号が働きます。

入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者

立入禁止の表示がある場所や、他人の田畑に無断で入ることも軽犯罪法1条32号の対象です。この号の場所に当たらないとしても、方法や目的についての別の制限は残ります。公道や借りた車の中からなら、いつでも問題がないという意味ではありません。尾行の目的と方法の制限も合わせて確認してください。

軽い罪だから広く使ってよい条文ではない(4条)

軽犯罪法1条の罰は拘留または科料で、刑法130条より軽い定めです。刑の重さとは別に、適用する側も人の権利を不当に侵害しないよう注意が必要です。軽犯罪法4条です。

この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

4条は、この法律を使う側(捜査機関)に向けた注意規定です。読者にとっての意味は「軽い罪だから何をしても大丈夫」ではなく、「軽い罪でも、条文に当たる行為には変わりない」という点です。罰が軽いことと、行為が許されることは別に考える必要があります。

「軽い」の中身も、刑法の側で決まっています。拘留は1日以上30日未満、刑事施設に入れられる刑です(刑法16条)。科料は1,000円以上1万円未満の金銭の刑です(刑法17条)。さらに軽犯罪法2条により、事情によっては刑が免除されることもあれば、拘留と科料の両方が科されることもあります。罰金とは別の刑で、身柄を拘束される拘留も含まれていることは知っておいてよい点です。

依頼する側が確認できること

  1. 見積りや説明の段階で、施錠された場所への立ち入りを前提にした説明がないか
  2. 「絶対にバレない調査」など、手段を明かさない説明で押し切られていないか
  3. 調べる場所、撮影する範囲、相手や周囲の人の権利への配慮はどう説明されるか

調査方法そのものの詳細を依頼者が把握できないことはありますが、違法な手段を前提にしているかどうかは、説明の受け答えから見えることがあります。

依頼する側にとっても、これは他人事ではありません。軽犯罪法3条は、1条の罪をそそのかしたり手助けしたりした者を、実際に行った者に準じて扱うとしています。無人の建物にひそむ張り込みや、立入禁止の場所への立ち入りを承知のうえで頼むことは、依頼した側の問題にもなりえます。説明を聞いて手段に不安が残るときは、その場で契約しなくてかまいません。消費者ホットライン188などの公的な相談先に聞いてから決める方法もあります。

この記事で確かめたこと

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